NEWSLETTER — JUNE 2015

「職人」の心意気

Message from Mr. Russell Ellwanger—TowerJazz CEO & TPSCo Chairman

日本製の刃物は世界一です。形はシンプルですが、その鉄製の刃は他の追随を許さないすばらしいものです。作り手の名前が付くような日本の包丁を買うときには、購入後に必ず手作業での”研ぎ”があります。その場で、弟子を傍らにした親方が、客が見守るなかで行うのです。

日本の砥石(といし)には名の通った採石場の石が使われます。本当に良質な石は限られた採石場からしか産出されません。そのため、その一つ一つに採石場の持ち主個人の「刻印」を押し、その採石場の石であることのみならず、そこから産出し得る最高品質の石であることを保証します。砥石と一緒に他の石もついてきますが、これらからは刃研ぎの段階で必要となる様々な「研磨剤」(私たちの業界でいうスラリーのようなもの)が生じます。こうした石についても「刻印」があり、産地や品質が保証されています。

私は以前、日本で「職人」と呼ばれる達人が書いた、道具の手入れに関する本を読んだことがあります。その本を読むと職人とはどういうものかがわかります。すばらしいものを作ることだけが職人たるゆえんではありません。限られた時間で効率的に、言い換えれば要求された「サイクルタイム」で、失敗なく製品を作らなければならないのです。自分の仕事に満足せず、作ったものを投げ捨てたりすれば、それはもう職人とはいえません。職人は、高品質な製品の効率的な「創造」が使命なのです!廃棄(「破壊」)は許されません。

また、職人は毎年正月になると自分が使う道具を家や店の中の特別な場所に置き、餅を供えて仕事ができることへの感謝の気持ちを表します。職人の技術と道具は相応じるものであり、それゆえ職人は、出来上がった作品とそれを作るための道具の両方に敬意を表するのです。例えば、最高レベルの包丁を使うのは最高レベルの料理人に限られますし、逆に達人でもないのに達人の道具を使うことは、その道具に対して失礼にあたるわけです。

こうした「職人」の心意気は日本社会のあらゆる場面で隅々まで浸透しており、現代のものづくりの現場である工場が常に高いレベルにあるのも、こうした背景と無関係ではありません。日本人は小さいころから、働く場所や道具を大切にし、責任を持たなければならないと教えられます。

私の家族は幸運にも日本への赴任機会があり、これを経験しました。末の娘の幼稚園はお寺が運営していたのですが、子どもたちは皆揃ってプラスチックの箱に入った「おしぼり」を持って幼稚園に通っていました。子どもたちの一日は、自分の机をおしぼりで拭くことで始まり、同様におしぼりで拭くことで終わります。つまり、教室を清潔にすること、ひいては教室に尊敬の気持ちを表すことは生徒の義務なのです。

そんなことを考えるにつけ、パナソニック・タワージャズ社を当社グループに迎えられたことを大変幸運に思います。ひとつの組織として、日本人の職場との関わり、そして、彼らの高い効率性を支えている品質基準に対するコミットメントを学び、理解し、実践することによって多くを得、その利益を享受できているのですから。

当社では今、コーポレート・クオリティの評価にこれまで以上に注目しています。その中心となるクオリティ担当グループに新たなリーダーが加わりました。ビジネス部門のジェネラルマネージャーから私の直属となるコーポレート・クオリティ部門バイスプレジデントに着任した、Ilan Rabinovichです。彼は熟練した経験豊富な技術者でもあります。現在、彼の下で各サイトのクオリティ担当マネージャーの選任が行われていますが、皆、ファブでの幅広く深い経験を持つ、前向きで熟達した技術者ばかりです。当社のクオリティ重視の考え方は、「Safety protects lives. Quality protects jobs(安全性が命を守る。品質が仕事を守る)」というスローガンに一致するものです。

効率性向上への一致団結した努力によって最高水準の性能を達成し、当社の持つツール、スキルセットそして職人的技術をもって最高水準の製品を作るために、当社はこれからも邁進していきます。そのために、ぜひ皆さんに力をお貸しいただき、共に歩んでいただきたいと思います。ご協力に感謝します。

ラッセル・エルワンガー
タワージャズ CEO
TPSCo 会長